2016年8月2日火曜日

佐渡輪行2016

 去年に引き続き佐渡、夏の輪行。始発のフェリーに乗って両津港に上陸。そして佐渡といいえばこの人、Tさんと合流する。

 大佐渡へ向かうプランがなかったわけではないが、時間的制約を考えて今年も小佐渡へ進路を取る。空には薄い曇が広がり、心配した気温もそこそこで頭打ちしそうな雰囲気だった。反面、鮮やかに晴れ渡る空と紺碧の海の織りなすコントラストの中をロードバイクで疾走することができないというのは至極残念に思った
 コースはTさんに全権委任。それが僕にとっていくつもの恩恵をもたらした。両津から道を逸れ農道に入った頃、山林の上空を一定のコースでぐるぐる周回する一羽の鳥を発見する。それはまさしくトキだった。野生で目撃したのは初めてでちょっと興奮する
 見渡せる同じ空にはトビもいて、その上空の振る舞いを比較すると、優雅に空を切るトビに比べ、必死に羽を動かすトキはどこかカッコ悪く見えてしまう。個体の特性なのか、種の飛行性能なのかわからないがアレはちょっとねぇ…と思うけれど、むしろそれが朱鷺に対する親近感に変わった。

 佐渡線から清水寺(セイスイジ)へ立ち寄る。京都の清水を模倣したそうだ。実物のスケールには到底及ばないものの、門をくぐった瞬間に、別の時間の流れに脚を踏み入れてしまったような錯覚があった。時間のヤスリにかけられ、木々の緑に囲まれた静寂さは何とも言えない風情が漂っている。




 再び佐渡線へ。バイクを漕いでいると春のロングライドの記憶が蘇る。連続する起伏。下りの勢いを借りて上りきれる坂もあれば、そうでないところもある。幾度となくそれらを繰り返した頃、道を左に折れ、多田(おおた)へ向かった。今度はだらだらと上り坂が続いた。僕らはせっせと坂を消化して上小倉の清水で休憩を取る。灰色の空から少しづつ青い空が見え隠れし始めた頃のことだ。
 冷たい清水は汗をかいた分を差し引いても十二分に美味かった。二つ目の恩恵だ。丁度、地元の方が水を汲みに来て、かつてこの自然の恵みがいかに生活に潤いを与えていたかを僕らに説明をしてくれる。話を聴きながら当時の情景に思いを馳せた。

 バイクに跨るとすぐに大きな茶色のダム壁が立ちはだかるように現れる。圧倒的な存在感だった。そのダムこそ、オニバス氏が現役時代に采配を振った治水事業の一つだとTさんに教えられる。このダムをもって佐渡の治水事業は完成したそうだ。
 今回のサイクリングは至る所にノスタルジックな風景に彩られている気がしてならない。これ今日のテーマ?と尋ねてもTさんはただ笑っているだけだった。

 トンネルを抜けると多田港まで一瀉千里。絶対にバイクで上りたくないような坂を下る。海岸線の深層海洋水の売店でいつも気になっていたアイスクリームを頂く。2人で腰を下ろして港を眺めながらアイスを食べた。
 お店の方から海洋水を勧められ、よかったらボトルに汲んでいっていいよーと言われ、お言葉に甘えて全力チャージ。三つ目の恩恵。海底300mの海水を汲んでろ過したもので、ミネラルをたくさん含んでいるそうだ。発汗の激しい僕には打ってつけの補給だ。

 多田、赤泊を抜ける。左手に広がる海の景色に眼をやりながら、1ヶ月後、またここを走っていることを想像しながらペダルを踏んでいると、小木まであっという間に到着した。
 小木ではお昼にお蕎麦を頂く。6年ほど前、会社の同僚らと釣りに訪れたときに食べたことのあるお店だった。小皿風の椀で出されるのは覚えていたが、味の記憶はきれいになくなっていた。
 少しヨレたお蕎麦とダシが程よく効いて、添えられた香の物と一緒に頂くと味わいが増した。素朴な味わいとでもと表現するのが適切だろうか。



 小木の坂へ向かう前に、ちょっと寄り道していこうとTさん。矢島・経島(ヤジマ・キョウジマ)を訪れる。溶岩がそのまま固まり、ごつごつとした岩肌がむき出しになった海岸で、近くの売店からは佐渡の民謡が拡声器から流れている。小木の景勝地は総じて民謡が流れていることに気付き、きっとこの拍子に合わせ、たらい舟を漕ぐのかもしれないなと思った。陽が完全に顔を出し、バイクを降りるとうだるような暑さになっている。


 いつか機会があればたらい舟を漕ぐのもいいなぁと思いつつ小木の坂へ向かう。これで3度目。一瞬で汗だくになりながら、昨年の佐渡トラで通過し時のことをパラパラと思い出す。
 雨が降り始め声援を贈る人たちが傘を差していたこと、それから女性の乗ったTTバイクに交され、追いかけようと必死になったことなど。今年も小木の坂は死に物狂いで頑張らねばならない。

 西三川の果実の売店が営業していたので立ち寄った。店に入るとしっかりクーラーが効いていて、試食のスイカを勧められた。もっと冷えたとこをお食べ~、と言うとおばちゃんは冷蔵庫から大きなスイカを取り出して、目の前でザクザクと切り出してくれた。甘くて良く冷えたスイカは喉を潤し、身体の熱を下げてくれた。この日、四つ目の恩恵。売店のおばちゃんは「暑い中、大変だねぇ~」と何度も繰り返し労ってくれた。



 風景を見ながら真野までの下りを堪能し両津へ向かう。Tさんは午後の陽射しに当たったせいか、疲労度合いが濃く、彼の自宅の近くでお別れをすることに。コーラで乾杯したかったけれど、良く冷えた甘いスイカがその代わりだったということで、またOWSで会うことを約束した。

 一人、両津港を目指した。何度となく通った見慣れた道を進む。港に到着し、サイコンを覗くと計ったかのようにちょうど100km。終わってみればあっという間の佐渡サイクリングだった。 
 今回も佐渡の人情と自然に触れることのできたサイクリングだった。
 じゃ、また来年!(了)





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