2016年7月20日水曜日

博多滞在のこと①

 7/13(水)博多滞在2日目。
 福岡県全域に大雨警報が出されていた。50年に一度の大雨になるらしい。確かにホテルを一歩出たらどしゃ降りで、雨粒が傘を容赦なく叩いた。当然のことながら僕は予定していた北九州方面へのサイクリングを取り止めた。腹の底では納得はいかなかったけれど、前日から予想された事態だったので心の準備は出来ていた。それでもどこか釈然としないのは言うまでもない。
 気持ちを切り替えようと行動を開始。アクシオン福岡の県立総合プールへ向かった。通勤の時間帯に紛れ、JR博多駅の横にある多階層のバスターミナルからバスを乗り継いだ。
 バスに揺られながら雨の博多の風景をぼんやり眺めていると、普段と変わらない日常のように見え、これから何処へ向かい、何をしようとしているのか解らなくなる。平日の朝、プール道具を携えているというのは、いつもよりちょっとした優越に浸れるが、明らかにそれと分かる旅行者を目にすると、せっかく九州まで来てるのだから、志向を切り替えた方が懸命だったかなぁと後悔が顔を覗かせた。せめてサイクリングならばと空を見上げるばかりだった。



 最寄りのバス停は目指す施設のすぐ横に佇んでいた。バスを降り、広げた傘を大きな雨粒が叩いた。雨脚は相変わらずだった。
 「アクシオン福岡」の看板が立つ場所から、勾配の急な長い階段を上ると目的の建物が現れる。後ろを振り返ると福岡空港の一部が眺めることが出来た。ホテルを出て約1時間が経っていた。

 この日は屋内の50mプールが一般に解放されていて、25mの方は中学生の大会が行われているらしかった。支度を整えプール屋内へ出ると、8つあるコースのうち一つのコースが使われていて、天井は高く、観戦スタンドが広がるだだっぴろい空間には監視の男性と僕を合わせた3名だけだった。大規模な大会を想定して建てられたものだと一瞥で判る。
 25mと50mのプールは屋根を同じくしているけれど、上の写真の外壁と似た様なガラスで仕切られていて音はほとんど聞こえない。時折、拡声器を通した様なアナウンスが僅かに聞こえてくる程度だ。
 大会で使用される電光掲示板やら、見たことのない設備が整備されているのに関わらず、全体的にはどこかもの寂しい雰囲気が漂い、天井から吊るされた水銀灯は煌々と灯っているが全体をカバーする程の照度はなく、水を張ったプールの水面に反射することでかろうじて屋内の明るさを保っていた。外のガラスにへばり付く無数の雨粒と、覗く鉛色の空がより一層暗くさせる。

 深水は1.6m、水は冷たくて重かった。経験したことのないプールの仕様に戸惑いながらアップからキック、それからプルブイを使ったドリルを普段通りに行ってみた。
 水面を叩く音は直ぐさま水に溶けてしまうようで、動作を止めた途端に静寂が戻る。巨大なプールを独り占めしているような気分になりドリルに集中することができた。と言うより集中するほかに選択はなかった。
 ドリルの後は100mを1分40秒と少しで、呼吸がやや落ち着くまでレストを取って回す。時計を追いかけると長水路はキツい。それから水が冷たいせいか体を動かしているのに関わらず寒さを感じて、プールを出て2度熱いシャワーを浴びた。結局100mを12本。軽く頭痛が出たのでそれを合図に練習を終了した。相変わらず屋内は閑散としていて薄暗く、バタフライの練習を始めたスイマーの水面を打つ規則正しい音だけが響いていた。

 プールを後にしてバス停に向かった。雨脚は少し弱まったような気がしたが、バイクを乗るには無理のある天候だった。バスの到着時間には20分以上あったので、次の停留所まで歩いてみることにする。
 雨の中を特に急ぐワケでもなく歩いた。2つ目の停留所を超え、3つ目、空港通り沿いの停留所が見えてきた頃、不意にバスが現れ僕を追い越していった。僕は咄嗟に追いかけて走り出すと、バスは認識したようにゆっくりとスピードを下げて停留所で僕の到着を待ってくれた。バスに乗り込みすぐに運転手さんに会釈をした。

 特にすることもないので博多駅の東急ハンズを物色する。一通り見て周り、もちろんいくつかの買い物もした。それからなんとなく空腹を感じたので上階のダイニング「くうてん」で一休みすることにした。ダイニングの名の由来は9階と10階に渡ってあるからだろうか。その「くうてん」の階段の吹き抜けのところで、空を見上げると相変わらず鉛色の空は広がっていたが、すっかり雨は止んでいた。携帯で博多周辺の天気予報を確認する。これ以降は曇り時々雨。ぼくは躊躇することなくエレベーターへ向った。(続く)

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