2015年7月1日水曜日

第30回みなと酒田トライアスロンおしんレース

 前回大会に続いて2度目の参戦。
 当日、新潟から車を走らせること2時間半。予定通りAM6時半に開催地の酒田港に到着する。
 薄墨色した空は今にも崩れ堕ちそうだったけれど持ち堪えてくれている。そんな空模様とは裏腹に、海岸端は風はなく穏やかな佇まいだった。

 前入りしていたメンバーとトランジションエリアに隣接する第1駐車場で合流する。今年は潟鉄メンバーをはじめ、見知った顔が幾人かいて心強い。皆に挨拶を交わし早速準備に取り掛かる。
 バイクを組み立てたところで受付へ脚を運んだ。そこに偶然居合わせた潟鉄メンバーのG明さんにご挨拶。と、同時にスイムが中止であることを告げられる。確かに告知用のホワイトボードにはスイム中止と代替ランの概要が記されている。G明くんの悪い冗談ではなかった。
  思い切り拍子抜けしてしまった。まさか2年連続とは夢々思っていなかったし、主催のアナウンスで是が非でもという想いが伝わっていたので、今年は大丈夫だろうと思い込んでいた

 昨年の大会、エリート達がウネる白波の中、果敢に挑む光景が脳裡に蘇る。ぼくにスイムへのきっかけを与えてくれたのは彼らだった。
 またしてもデュアスロン。今度こそと意気込んでいたが仕方がない。改めて天候次第で状況が一変する競技だということを思い知らされる。

 トランジットエリアで準備をする。今年はカゴが入れものとして予め用意されており、必要なモノを仕舞った。ぼくは雨が降っても濡れないように持参したビニール袋で道具を覆う。一通り準備が整い、バイクの際の予行練習を試してみる。カゴの位置と手順の確認だ。
 ランからバイク、再びラン。漠然とながらエリア内での所作をイメージする。
 周囲を見渡すと選手らそれぞれにセッティングをしている。その姿が一様に真摯に映り、競技に対する姿勢にも伺える。レース前の静謐。それは本番と対局するコントラストを醸し出していて、トライアスロン独特の雰囲気に繋がっているように思われた。

 走破タイムをシュミレートする。代替えランは流れ次第。最近取り組んでいるショートインターバルの効果が期待できるかもしれない。そしてメインはバイク。元から今回はバイクパートに力を注ごうと決めていて、更にそれを前提として10kmランを50分以内にまとめようと考えていた。昨年タイムを基準にすると2時間20分は切りたいところだ。
 前回ははバイクの練習不足から無理が祟りランに影響した。今年は昨年以上に跨っているし、教本を見つけてそれに則って踏んでいる。そうすると自ずからバイクへの期待値は高まってしまう。

 開会式からスタートまで潟鉄メンバーと一緒だった。他愛のない会話を交わしリラックスする。仲間がいるというのは嬉しいものだ。 会場ではお揃いのトライスーツの「潟鉄」という二文字が気になる方もおられ、それどういう意味?といった質問をいただくことがチラホラ。新潟では、新潟鉄工所ですか?と尋ねられるのがベタなところであるが、ここ山形では「潟」は新潟の潟と、説明すると、ほぅニイガタからねー、となる。声を掛けて頂くというのはありがたいことだ。

 スタート5分前。代替ラン3.5km走のスタート地点へ移動する。ぼくは軽く走って心拍を上げた。キロ4分程度で入る為には欠かせない直前のアップ。
 第1ウェイブがスタート。強い緊張感という訳ではないが、スタートの肌が泡立つような感覚は相変わらずだ。スターターがフォーンの引き金を引くのが見えた。その合図と共にぼくたち第2ウェイブは一斉に走り出す。レースの始まりだ。

 すぐさま縦長の隊列になる。入りの1kmは4分2秒。息が上がりそうになるのを調整してペースを落とす。次のキロラップは4分10秒。この辺りで第1ウェイブの後続と交わる。さらに落として3kmラップは4分20秒。
 ラン終了の間際で何人かの選手に追い抜かれ気持ちが高揚する。トランジットへ向かう道中でちょっとした競り合いになる。息が弾む。エリア侵入口から数えて3番目の通路を目掛け、自分のバイクまで駆ける。

 サンバイザーを外しバイクに掛けたヘルメットを着用。ランシューズを脱ぎバイクシューズに足を入れる。乗車の準備が整いバイクを押しながらトランジションエリアを抜ける。
 乗車ラインを超えたところで勢いを付けた自転車をサッと跨いで、クリークをペダルに噛み合わせ発進!と出来れば相当格好いいのだけれど、ぼくはラインを超えたところで一度立ち止まり、いつものようにヨイコラショっとバイクを跨いで右のクリークを入れる。
 さぁ待望のバイクパートの始まりだ。足慣らしを兼ねて一つ軽いギアでクルクルとペダルを回す。路面は乾いている。問題ないなと思った。
 今回、天候が良くないことが想定できたのでDHバーを使うのを止めた。あとは「やまめ乗り」を意識するだけだった。骨盤の前傾、スピードアップはおじぎを深く、脚の不要な力を抜いて1時7時の漕ぎ脚に体重を乗せる。コース形状に応じ適切なパワーを一定出力することを心がける。
 
 バイクコースは昨年と同様。難所は追い越し禁止区域のSクランク。1周目、スピードをキープして入ってしまい、次のカーブで大きく膨らんで砂の上を通ってしまった。タイヤが取られるんじゃないかとヒヤヒヤした。調子に乗って突っ込むとかなり危険な場所だ。実際その場所が原因かわからないけれど転倒事故が起こったようだ。救護を受けている選手が視界に入り、その復路で救急車とすれ違った。
 バイクパートはリザルトを見てかろうじて70分を切ったことを知る。昨年と同じくらいかなと思っていただけに素直に喜んだ。フィジカルは一旦棚上げして、機材に投資することでさらに伸びしろが得られるのではないかとも考えてしまうのであった。

 そして10kmラン。ランコースを3周回する。トランジットエリアからコースに出るまでが遠いなと感じる。バイクの後なので骨盤から下が強張ってしまい、走り出し直ぐはもどかしい感覚がある。いつものように身体を動かすのが難しい。ストライドが狭くなる。ブリックランはニュートンのようなフォアフット用のシューズが合うかもしれない。今回準備しようか再三迷った挙句、所有する中から比較的クッションの効いたものを選択したけれどしっくりこない。これは次への改善点の一つだろう。結局ピッチを上げスピードを得る方法しかなかった。後は身体がほぐれるまでの辛抱だった。入りの1kmは4分50秒。期せずしてぼくのフルマラソンのラップと同じだった。体感よりは速くて少し驚く。

 殊のほか1周目が長くて辛い。あれ?こんなに辛かったかな?と昨年の記憶からは走り出しの足腰の痛みしか思い起こすことは出来なかった。バイクが終わればあとはラン、10kmなんて楽チンさと思い込んでいただけに重くのしかかってくる。
 速いランナーに次々と追い抜かれる。焦る。けれどこんな時こそペースキープ、いくつもあるエイドを利用しながら慣れるまで我慢。すれ違う仲間たちに合図を送り励まされる。

 2周目の折り返しから身体が楽になった。ペースが上げられそうだ。ほんの僅かだけれど。後方からH間さんが確実に差を詰めてきていた。発奮材料にする。続いて視界にはフェマンさん、鉄女ママが火花を散らさんばかりのデットヒートを繰り広げている。それぞれに声を掛ける。

 最終周回、ラスト1周だ。ちょうどG明さんのフィニッシュにすれ違い、合図を交わす。
 いつものラン感覚でいけた。じんわりとアクセルを踏む。3度目の折り返し、周回の輪ゴムを左手にかけて貰いスタッフに、ありがとうと声をかける。
 海岸線に沿った直線コースをしっかりと踏みしめる。グレーの擁壁の隙間から白波の立つ海が覗く。次こそ泳げるといいなぁと思った。ラストは4分半でまとめフィニッシュゲートに通じる青い絨毯を駆け抜けた。(了)


 



 

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