2013年6月20日木曜日

第40回関川マラソンのこと

 今年は重要文化財の渡辺邸佐藤邸がスタート地点だった。
スタート数分前、恒例となった前説が始まる。昨年と同じスタッフの方だと思う。ぼくらは彼の説明に耳を傾けた。
 スタートからすぐに直角の曲がり角があること、最初の1kmぐらいは幅員が狭いこと、そして我々の期待を裏切らない難所が設定されていることを話され、昨年とほぼ同じくだりが参加者の笑いを誘う。(今年もネタバレしないように伏せることにする)会場がリラックスした雰囲気に包まれ、スタートはすぐそこまで近づいていた。

 村長の号砲がハーフマラソンスタートの合図だった。
 500人の集団が隊列を組みコーストレースを開始する。アナウンスのあった曲がり角から、しばらく狭い路地を駆ける。我々は一路、大石川を目指すのだ。沿道からパラパラと声援が送られる。スタートの入りは無理のないペースだったと思う。けれど暑さのせいで、始まったばかりだというのにかなりの汗をかいていた。厄介な暑さだった。山間に入れば少しはマシになるだろうと期待した。

 隊列は下川口橋を渡り左折。大石川上流へ向かう。昨年のスタート地点の小学校あたりでファイターズさんに追い抜かれる。ロードバイクで会場に来られたとは思えないスタミナだ。小学校を過ぎるとコースにわずかな登り勾配がかかる。ぼくはペースを守ろうとするが、身体が重く感じちょっと辛い。しばらく進むと、早くも折り返しのランナーがこちらに向かってくるのが見えた。先頭からそう離れていないところで走友会Aさんの姿があった。続いてM谷さんの姿もあった。一方のぼくはジリジリとペースが落ちていた。

 折り返す際にパイロンにタッチ。いつものお約束の通過儀礼だ。ここにたどり着くまで随分と長く感じた。距離も、時間も。折り返してからはやや下りになる。助かったなと思った。ここを上手く利用してスピードに乗りたい。そうこうしていると、スピリットZさんに追い抜かれる。彼もバイク組だ。トライアスリートの実力を見せつけられる。「ファイト!」と声をかけて頂いただく。ぼくは離されまいとしたが、一歩づつ背中が遠のいていく。

 11km地点で55分を超えていたと思う。目標タイムの100分切りには届かないなと諦めた。けれどレースはまだ中盤。敗北を感じずにはいられなかった。焦りが動揺に変わる。大会に至るまでの練習を振り返ったり、いくつかのことを反芻してレースから心が離れ集中力を欠く。今振り返ると一番やってはいけないことをやってしまっていた。
 もちろん、あがいてみた。ペースを保つために、他のランナーを意識して走ってみたが、むしろ逆にペースを乱してしまった。あそこではじっと我慢するべきだったかもしれない。

 再び下川口橋に戻り右折。丸山大橋を目指す。最初の坂登りだ。林を抜けるコースで陽射しから逃れられたのは幸いだったが、所詮は登り坂。脚はなかなか前に出ない。喘ぎながら県道に出て左折。登りはまだ続く。勾配は緩んだものの強い陽射しが容赦なく照りつけてくる。なんとか辿り着いた丸山大橋でペースを落として一息。道路から橋の歩道に移りをゆっくり走りながら、眼下に広がる風景を眺めた。タイムはさておいて、しっかり完走しようとようやく気持ちを切り替えることができた。開き直るのに随分時間がかかってしまった。

 大橋を通過するときつい勾配の、蛇行した長い下り坂になった。陽射しに照らされながらヨチヨチと下り、コース沿いの桜並木に木陰を求めて逃げ込む。軽い熱中症なのか、こめかみが痛かった。極力陽射しを避け走る。給水にたどり着き、首に水をかけ身体を冷やす。キャップのツバのある方を後ろにかぶり、せめて日光の直射を浴びないようにする。敵は暑さだった。

 道なりに進むと二つ目の坂が現れた。前傾姿勢をとりゆっくりと登る。頂上で息を大きくつく。本来ならば下りは勢いをつけて進みたいのだけれど、上手に脚が動かなかった。下りも登りと同じぐらいのスピードだった。

 進んでいくと視界が開けてきた。木々に遮られながら、川を挟んだ対岸に目指すゴールが見える。自分が今どの位置にいるのか、どこへ向かって走っていくのかを理解する。けれどそれは頭で理解している残りの距離よりもゴールを遠くに感じさせた。ちょっとした視覚的罠だったかもしれない。

 給水でまた頭から水を浴びる。陽射しは相変わらず容赦ない。ゴールまであともう少し、もう少しと呪文のように唱える。トコトコ進んでいくと、ホースでランナーに水を浴びせるご婦人が目に留まる。やった!ぼくはその放物線を描くシャワーに飛び込んだ。何事にも変え難い。よしっゃ、まだ頑張れる。大きな声でご婦人にお礼を言いった。

小見橋を渡り対岸へ。ゴールのスポーツ公園を目指し土手を走る。残り3km。12km最後尾のランナーが散見される。彼らも辛そうだった。ぼくはファイト!と声をかける。少しづつ、確実にゴールは近づいてくる。すぐにではないけれど一歩、一歩づつ、進む分だけ近づいてくる。

ゴール地点が見える。ゴールでは一人ひとりのゼッケンと名前をマイクでアナウンスしながら、かつゴールテープを張って迎えてくれていた。
気がつくと、ぼくの目の前に真っ白なゴールテープがあった。テープが揺れた。1時間51分35秒。3度目のハーフマラソンにゴールした。

6/20までの走行距離…145km

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